ゲーム:『Air』感想その2
2006年5月21日 ゲーム
CD-ROM KEY 2001/07/19 ¥9,240
AIRレビュー2回目。
取り敢えず睡眠時間を削って鬼プレイを敢行、佳乃と美凪のルートを終わらせた。疲。
全体的な印象は、前回のレビューと殆ど変わっていない。相変わらず掛け合いは軽快で、シリアスは冗長で、音楽は素晴らしい。
さて。
このゲーム、カテゴライズするならば「恋愛アドベンチャー」というジャンルになるのだろう。
でも、このゲームのシナリオ(少なくとも僕が終わらせた二人)においては、「恋愛」というのは一つの「きっかけ」でしか無い。
恋愛という主人公との交流を通し、それぞれのヒロインの歪んだ「家族」が浮かび上がって、そしてその解決を描く、というものになっている。
これが多分、この作品に(比較的)女性ファンが多いという理由だと思う。男性から見た恋愛観があるとは言え、それがメインではないというのは大きいんじゃないだろうか。
というわけで、以下は個々のシナリオについて思ったことを述べていく。
ネタバレしているので注意。
・佳乃シナリオ
はっきり言って薄味。
最初から最後まで感情移入出来ず、結局「ふーん」で終わってしまった。
これは多分、ヒロインの心理描写不足なのでは無いかと思う。
このシナリオにおいて、自分に何が起きているのかを佳乃は知ることが出来ない。正確に言うと、主人公や聖の態度から「何かある」ということを察してはいたが、その詳細を知ることは出来ないのだ。
更に、プレイヤーは「佳乃が『何かある』と察していた」ことを知ることが(シナリオのラスト直前まで)出来ない。何故ならこのゲームは主人公の一人称であるため、基本的に「主人公の持つ情報=プレイヤーの持つ情報」であるからだ。起きてから佳乃が居ないことに気付き、慌てる主人公を描くためには、そうでなければならなかった。
つまり、このゲームの構成だと、「佳乃が自分に起きていることについてどう感じているのか」ということがまったく描写できない、ということになる。主人公や聖が苦悩してはいるが、肝心の本人が置いてけぼりになってしまう。
だから「空に行くことにした」という佳乃の行動はプレイヤーにとって唐突に思えてしまうし、感情移入することも難しい。
解決方法も、主人公の持つ「法術」によるものであって、佳乃がどうこうできるような物でもなかった。
これらの理由が、このシナリオを薄味にしてしまっているんじゃないだろーか。
上記の問題を補うためなのか、佳乃自身が解決しなくてはならない問題というのも存在した。
腕のバンダナがそれだ。
リストカットを防ぐため、「大人になるまで外さなければ魔法が使えるようになる」と聖が付けさせたバンダナ。
佳乃は律儀にもそれを守ってきた(本人申告だから、実は外したことがあるという可能性も無いことは無いけどな)けど、「魔法」なんて嘘だってことは本人にもわかっているのだろう(だからこそ、魔法のような「法術」が使える主人公に惹かれたわけで)。
でも、外せない。主人公が無理に外そうとすると、バッドエンドで町を出ることになってしまうしね(笑)。
それを初めて外すのは主人公とのセックスの時なわけで、つまりこれは大人になる象徴として扱われているのだろうけど、うん、ぶっちゃけ印象薄い。シナリオの中核として扱うには余りに描写不足。しかもセックスの後また会う時には、結局また付けてるっていう。
おまけにセックスの時外すのは主人公で、佳乃本人じゃないしね。
つまり、佳乃はアクティブな少女として描かれているけど、自ら問題を解決したことは無いのだ。出来ない問題ばかりだった、という方が正しいかもしれない。
そゆーことを考えると、やっぱりヒロインが薄っぺらくなってしまうのも仕方無いなぁ、と思う。
正直、どう考えても聖&ポテトルートです。本当にありがとうございました。
・美凪シナリオ
良かった。
みちるがお気に入り(って書くとなんかロリっぽいけど)。主人公を何故かフルネームで呼ぶのがいいねー。
美凪のキャラクターもいい味を出していて、うん、感動したとまではいかないけど、やっていて面白いシナリオだったと思う。
ちなみにエロシーンは普通にエロくて驚いた(例によっておまけ以下の扱いだったけど)。
さて。
これはつまり、「夢」(思い出、とも言いかえられる)から脱却しようとする物語だ。
二番目の子供を流産してしまった美凪の母親(以下母)。一番目の娘が父親好きだったのを寂しく思っていた母は、いつしか精神を病んでしまう。
一番目の子供――美凪を、生まれてこなかった子供の名前「みちる」と呼び始めてしまうのだ。
名前というのは認識そのもので、名づけるとは「在ることを認め識る」ということ。
更に、子供への命名というのは「こうあって欲しい」という祝福でもある(「命名」ということについてはいずれちゃんと書くつもり)。
「あなた達の未来が、いつも美しい凪でみちていますように」
そう願ってつけられた名前がこうなるのは、何とも皮肉的であり、そして哀しいことだ。
一方。自分が「みちる」として母に認識されることを「自分への罰」(この辺どーにも嘘くさくて、僕としては好きじゃないのだけど)として受け入れていた美凪は、ある日幼い少女に出会う。
その少女は「みちる」という名前で、その少女の前ならば、彼女は「美凪」であることが出来た。二人は親しくなり、実の兄弟のようになる。
しかしその「みちる」は、結局「夢」でしかなかった。
結果的には、ある意味これで上手くいっていた、とも言える。美凪自身が「みちる」と呼ばれることを受け入れていたのだから。
「夢」ではあったけど、全員がそれなりに幸せでもあった。
しかし、母が正常に戻ってしまうことからそれは崩壊する。
かつて「美凪」を失い、更に「みちる」をも喪失してしまった母は、「娘なんて一人も居なかった」と思い込んでしまう。何かを失ってしまった、という喪失感のみを持って、どうしようもなくなってしまうのだ。
ここで、物語の重要な転機が訪れる。美凪は、自分が「みちる」ではなく「美凪」であると母に訴えることが出来るのか。自分を再び「在ることを認め識ってもらう」ことができるのか。
それは、主人公が今までにどんな行動をしてきたか(ぶっちゃけプレイヤーがどんな選択肢を選んだか)次第だ。
さて。
僕がこのシナリオで良いと感じたのは、美凪自身の行動によって問題が解決することだ。
前述した佳乃シナリオとは対照的になっている。
夢を見ることを止め、思い出に浸るのも終わりにして、現実に向き合うことを選択する。
ありがちだけど、やっぱりいいよなぁ。
前に進もうとする人の意志は尊い。
前に進もうとする美凪に対し、みちるは「思い出が欲しい」と言う。
消えてしまう前に、みちるだけの思い出が欲しい、と。
一見先ほどのものと矛盾するようだけど、そうじゃない。
「人は思い出無しでは生きていけないが、そればかりでもいけない」。
このシナリオで言われているのは、そういうことだ。
主人公が眠ってしまったみちるを背負い、月光を浴びながら美凪と並んで歩くCGがとても良い。
駅舎での三人の生活。
あれはとてもぎこちなくて、短くて、ままごとのような不完全なものだったけれど。
あの時、三人は間違い無く家族だったのだ。
とまぁ、どちらのシナリオが気に入ったのか丸分かりなレビューになってしまった。いや、書くのに2時間もかかってさ、そうするとやっぱ最初と最後でテンションが違ってきちゃうんだよね。うん。
残るは観鈴+何かあるらしいシナリオ。
いよいよメインヒロイン、気合入れていきます。
……とっとと.hack//G.U.もやりたいし、ね(笑)。
AIRレビュー2回目。
取り敢えず睡眠時間を削って鬼プレイを敢行、佳乃と美凪のルートを終わらせた。疲。
全体的な印象は、前回のレビューと殆ど変わっていない。相変わらず掛け合いは軽快で、シリアスは冗長で、音楽は素晴らしい。
さて。
このゲーム、カテゴライズするならば「恋愛アドベンチャー」というジャンルになるのだろう。
でも、このゲームのシナリオ(少なくとも僕が終わらせた二人)においては、「恋愛」というのは一つの「きっかけ」でしか無い。
恋愛という主人公との交流を通し、それぞれのヒロインの歪んだ「家族」が浮かび上がって、そしてその解決を描く、というものになっている。
これが多分、この作品に(比較的)女性ファンが多いという理由だと思う。男性から見た恋愛観があるとは言え、それがメインではないというのは大きいんじゃないだろうか。
というわけで、以下は個々のシナリオについて思ったことを述べていく。
ネタバレしているので注意。
・佳乃シナリオ
はっきり言って薄味。
最初から最後まで感情移入出来ず、結局「ふーん」で終わってしまった。
これは多分、ヒロインの心理描写不足なのでは無いかと思う。
このシナリオにおいて、自分に何が起きているのかを佳乃は知ることが出来ない。正確に言うと、主人公や聖の態度から「何かある」ということを察してはいたが、その詳細を知ることは出来ないのだ。
更に、プレイヤーは「佳乃が『何かある』と察していた」ことを知ることが(シナリオのラスト直前まで)出来ない。何故ならこのゲームは主人公の一人称であるため、基本的に「主人公の持つ情報=プレイヤーの持つ情報」であるからだ。起きてから佳乃が居ないことに気付き、慌てる主人公を描くためには、そうでなければならなかった。
つまり、このゲームの構成だと、「佳乃が自分に起きていることについてどう感じているのか」ということがまったく描写できない、ということになる。主人公や聖が苦悩してはいるが、肝心の本人が置いてけぼりになってしまう。
だから「空に行くことにした」という佳乃の行動はプレイヤーにとって唐突に思えてしまうし、感情移入することも難しい。
解決方法も、主人公の持つ「法術」によるものであって、佳乃がどうこうできるような物でもなかった。
これらの理由が、このシナリオを薄味にしてしまっているんじゃないだろーか。
上記の問題を補うためなのか、佳乃自身が解決しなくてはならない問題というのも存在した。
腕のバンダナがそれだ。
リストカットを防ぐため、「大人になるまで外さなければ魔法が使えるようになる」と聖が付けさせたバンダナ。
佳乃は律儀にもそれを守ってきた(本人申告だから、実は外したことがあるという可能性も無いことは無いけどな)けど、「魔法」なんて嘘だってことは本人にもわかっているのだろう(だからこそ、魔法のような「法術」が使える主人公に惹かれたわけで)。
でも、外せない。主人公が無理に外そうとすると、バッドエンドで町を出ることになってしまうしね(笑)。
それを初めて外すのは主人公とのセックスの時なわけで、つまりこれは大人になる象徴として扱われているのだろうけど、うん、ぶっちゃけ印象薄い。シナリオの中核として扱うには余りに描写不足。しかもセックスの後また会う時には、結局また付けてるっていう。
おまけにセックスの時外すのは主人公で、佳乃本人じゃないしね。
つまり、佳乃はアクティブな少女として描かれているけど、自ら問題を解決したことは無いのだ。出来ない問題ばかりだった、という方が正しいかもしれない。
そゆーことを考えると、やっぱりヒロインが薄っぺらくなってしまうのも仕方無いなぁ、と思う。
正直、どう考えても聖&ポテトルートです。本当にありがとうございました。
・美凪シナリオ
良かった。
みちるがお気に入り(って書くとなんかロリっぽいけど)。主人公を何故かフルネームで呼ぶのがいいねー。
美凪のキャラクターもいい味を出していて、うん、感動したとまではいかないけど、やっていて面白いシナリオだったと思う。
ちなみにエロシーンは普通にエロくて驚いた(例によっておまけ以下の扱いだったけど)。
さて。
これはつまり、「夢」(思い出、とも言いかえられる)から脱却しようとする物語だ。
二番目の子供を流産してしまった美凪の母親(以下母)。一番目の娘が父親好きだったのを寂しく思っていた母は、いつしか精神を病んでしまう。
一番目の子供――美凪を、生まれてこなかった子供の名前「みちる」と呼び始めてしまうのだ。
名前というのは認識そのもので、名づけるとは「在ることを認め識る」ということ。
更に、子供への命名というのは「こうあって欲しい」という祝福でもある(「命名」ということについてはいずれちゃんと書くつもり)。
「あなた達の未来が、いつも美しい凪でみちていますように」
そう願ってつけられた名前がこうなるのは、何とも皮肉的であり、そして哀しいことだ。
一方。自分が「みちる」として母に認識されることを「自分への罰」(この辺どーにも嘘くさくて、僕としては好きじゃないのだけど)として受け入れていた美凪は、ある日幼い少女に出会う。
その少女は「みちる」という名前で、その少女の前ならば、彼女は「美凪」であることが出来た。二人は親しくなり、実の兄弟のようになる。
しかしその「みちる」は、結局「夢」でしかなかった。
結果的には、ある意味これで上手くいっていた、とも言える。美凪自身が「みちる」と呼ばれることを受け入れていたのだから。
「夢」ではあったけど、全員がそれなりに幸せでもあった。
しかし、母が正常に戻ってしまうことからそれは崩壊する。
かつて「美凪」を失い、更に「みちる」をも喪失してしまった母は、「娘なんて一人も居なかった」と思い込んでしまう。何かを失ってしまった、という喪失感のみを持って、どうしようもなくなってしまうのだ。
ここで、物語の重要な転機が訪れる。美凪は、自分が「みちる」ではなく「美凪」であると母に訴えることが出来るのか。自分を再び「在ることを認め識ってもらう」ことができるのか。
それは、主人公が今までにどんな行動をしてきたか(ぶっちゃけプレイヤーがどんな選択肢を選んだか)次第だ。
さて。
僕がこのシナリオで良いと感じたのは、美凪自身の行動によって問題が解決することだ。
前述した佳乃シナリオとは対照的になっている。
夢を見ることを止め、思い出に浸るのも終わりにして、現実に向き合うことを選択する。
ありがちだけど、やっぱりいいよなぁ。
前に進もうとする人の意志は尊い。
前に進もうとする美凪に対し、みちるは「思い出が欲しい」と言う。
消えてしまう前に、みちるだけの思い出が欲しい、と。
一見先ほどのものと矛盾するようだけど、そうじゃない。
「人は思い出無しでは生きていけないが、そればかりでもいけない」。
このシナリオで言われているのは、そういうことだ。
主人公が眠ってしまったみちるを背負い、月光を浴びながら美凪と並んで歩くCGがとても良い。
駅舎での三人の生活。
あれはとてもぎこちなくて、短くて、ままごとのような不完全なものだったけれど。
あの時、三人は間違い無く家族だったのだ。
とまぁ、どちらのシナリオが気に入ったのか丸分かりなレビューになってしまった。いや、書くのに2時間もかかってさ、そうするとやっぱ最初と最後でテンションが違ってきちゃうんだよね。うん。
残るは観鈴+何かあるらしいシナリオ。
いよいよメインヒロイン、気合入れていきます。
……とっとと.hack//G.U.もやりたいし、ね(笑)。
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