映画:『秒速5センチメートル』感想
2007年4月26日 映画――どれほどの速さで生きれば、きみにまた会えるのか。
小学校の卒業と同時に離ればなれになった遠野貴樹と篠原明里。二人だけの間に存在していた特別な想いをよそに、時だけが過ぎていった。
そんなある日、大雪の降るなか、ついに貴樹は明里に会いに行く……。
貴樹と明里の再会の日を描いた「桜花抄」、その後の貴樹を別の人物の視点から描いた「コスモナウト」、そして彼らの魂の彷徨(ほうこう)を切り取った表題作「秒速5センチメートル」。3本の連作アニメーション作品。
http://5cm.yahoo.co.jp/director/index.html
え? もう五月?
そんなわけで四月から新生活が始まったけど、慣れるのに精一杯。スケジュール的には前よりずっと楽になったのに、なんだかひどく疲れる。明日はサークルの新歓。人間関係構築だるいし、多分サークルには殆ど行かないだろうなぁ。その分バイトしたい。
さて。
新海誠監督の作品、「秒速5センチメートル」を観るのをすっかり忘れていて、調べてみたら渋谷での公開日が明日までだったので慌てて行ってきた。
そんなわけで今日はその感想でも。
新海誠は個人製作短編アニメーション「ほしのこえ」で一躍有名になり、その後「雲の向こう、約束の場所」などを製作しているアニメーション監督。背景を鮮明に魅せる光と影のコントラストと、切なさと爽やかさを感じさせる甘酸っぱいストーリーが特徴かな。
「雲の向こう、約束の場所」についてはこのBLOGでも以前に取り上げている(http://diarynote.jp/d/77331/20060701.html)けど、その中で僕は「つーか、新海監督には一度、SF要素一切無しの直球ど真ん中の青春作品を作ってみて欲しい」と書いた。
そして、今回の「秒速5センチメートル」はまさにそんな作品。
で、具体的に内容。
背景の美しさや、駅、踏み切りなどのディティールについてはもう、言うこと無し。以前と同じく素晴らしいの一言。観ていて気付いたのだけど、どうやら僕は、この人が描く「雪の降りしきる都会」に酷く弱いらしい。ツボ過ぎ。
ただ、Amazonのレビューでも書かれているけど、風景が「動画」になると途端に普通になってしまうのがちょいと惜しい。まぁ、予算もそんなに無いだろうし、仕方無いと言えば仕方無いことなのかな。
Amazonでは人物の描き方についても触れられていたけど、僕は特に不満は感じなかった。普通だと思う。個人的には、ああいう感じのキャラデザ大好きなのでー。
ストーリーは先ほど載せた公式の紹介通り、SF要素皆無の青春物ど真ん中だった。
けど、正直言って前二作とちょい被るかな、と。淡い初恋。穏やかな日々。別離。風景にそれぞれを重ねて想う。そういう、作品を語る上での骨格が殆ど同じなので、そこは人によっては減点対象になってしまうと思う。僕はこういう王道大好きなので、全然気にならなかったけど。
演出は前二作より良くなった。第三話のタイトルから主題歌が流れだす辺りは素晴らしかったし、その後も歌詞と上手くシンクロしていたりしてまる。「雲の向こう、約束の場所」より格段に良い。
けど、ぶっちゃけ主題歌に喰われちゃってる(笑)。なにせ、主題歌が山崎まさよしの誰もが知ってる超名曲、「One more time, One more chance」なもんで。良い意味でも悪い意味でも存在感あり過ぎ。まぁ、歌詞は本当にストーリーにぴったりだったし、良いラストだと思う。
総じて、僕個人としてはまったく気にならないけど、他の人にとっては批判対象になるような要素が多かったような。
「ほしのこえ」から三作続けて同じような作風だったし、SF要素の無いこの作品は、新海誠が描く青春系作品の総結集だったと言えるかもしれない。次の作品からは、多分ある程度の方針転換が必要になってくると思う。
……僕個人としては今の作風が凄く好みなので、作風を変えて欲しくない感もあるのだけど。これ以上先に進むには、やっぱり違う方向性の作品を作っていくしかないんじゃないかな。
まぁ、色々言ったりもしたけど、アレだ。観とけってことで。渋谷シネマライズは明日(4/27)までだけど。
レンタルに入らなかったら、多分セルDVD買うと思う。僕にとっては、それくらい素晴らしい作品だった。
ってかやっぱ新海誠最高だちくちょー!
これを観た帰り道。夜と夕方の境目のコントラストが絶妙に綺麗だったので、ちょっと自転車を止めて眺めていた。
この作品のことを思い浮かべていたら、自分の中学時代のこととか思い出して、ちょっと泣きそうになったり。
世界は美しいと思った。
映画:『ハチミツとクローバー』感想
2006年8月15日 映画
……どうも、お久しぶり。
いやまぁなんつーか、色々と忙しかったということでご勘弁下さい。
さて。
先月9巻が発売された、大人気少女漫画「ハチミツとクローバー」通称ハチクロ。僕が唯一読んでいる少女漫画(のだめカンタービレにも手を出したいのだけど、既刊が多いとどうしても躊躇してしまったり。学生は金ねーのよ)。
9巻の展開は正直言ってかなり不満だったのだけど、まぁそれは置いといて。
実写映画観てきた。映画館は若い女性で埋まってた。僕、この上なく場違いオーラ出てた。
…………とりあえず、いってみよう。
ちなみに画像は事前に発売されたメイキングDVDのもの。
キャスト。
女性陣は納得。特に山田はすげーぴったり。
男性陣はうーん、ちょっとねぇ。竹本、あんなに太くないし。真山、あんなキモヲタじゃないし。森田、髪型と服装が悪夢だし。花本先生、……合ってなくもないけど、もうちょい若い感じでも良かったのでは?
キャストが合っていないというより、服装や髪型で転んでしまっている感が強い。惜しい。
ストーリー。
いいんじゃない? つーか覚悟してたより全然おっけー。
ちょっと細かいところで「ハチクロらしさ」が出ていなかったりもするけど、大体は許容範囲内。リカさんの態度とかおかしーだろ! って感じだけど何とかギリギリ許せるレベル。
ちょっとラストが中途半端かな? でもまぁ、原作がまだ完結していないし、妥当なところで終わっていたと思う。
原作で最後まで行くことが無い(らしい)海へ旅行したのも、アナザーストーリーだからこそ出来る良さが出ていた。
そしてニャンざぶろう登場に吹いた(笑)。いやー、まさかアレが出てくるとは。登場と同時に映画館の各所でクスクス笑いが。
残念だったのが、竹本の自分探し消滅。残骸らしきものは微妙に残ってたけど、やっぱりあれは違う。あの自分探しが無くて何処がハチクロだ糞野郎と言いたくなるけど、まぁ尺の問題で仕方ないよね……。
まぁ総じてそこそこの出来。
音楽。
作中の曲はまったく印象に残らず。スタッフロールで流れるテーマ曲の内、スピッツの「魔法のコトバ」はすげーいいんだけど、スガシカオの曲が微妙。なんかスガシカオの曲らしくなくて、全然印象に残らない。スガシカオは「夏祭り」とか好きなんだけどなぁ。
結論。
キャストで失敗している感は否めないけど、まぁ漫画の映画化なら良い方では。最近観た映画化作品は「姑獲鳥の夏」(京極堂の最初の薀蓄が耐えられず速攻でさようなら。映像化する作品じゃねーよ)「疾走」(演技がギャグ)「最終兵器彼女」(阿呆くさくて最後まで観られませんでした)とか酷いものばかりだったので、久々にそこそこ観れるものに会った気がする(ちなみに今挙げた作品、原作は全て大好き)。
まぁ、原作ファンで、キャストを見ても「何とか耐えられそう」と思える人なら観ても損は無い。と思う。
ちょっと短いけど、この更新はリハビリのつもりなのでここでおしまい。また今度。
いやまぁなんつーか、色々と忙しかったということでご勘弁下さい。
さて。
先月9巻が発売された、大人気少女漫画「ハチミツとクローバー」通称ハチクロ。僕が唯一読んでいる少女漫画(のだめカンタービレにも手を出したいのだけど、既刊が多いとどうしても躊躇してしまったり。学生は金ねーのよ)。
9巻の展開は正直言ってかなり不満だったのだけど、まぁそれは置いといて。
実写映画観てきた。映画館は若い女性で埋まってた。僕、この上なく場違いオーラ出てた。
…………とりあえず、いってみよう。
ちなみに画像は事前に発売されたメイキングDVDのもの。
キャスト。
女性陣は納得。特に山田はすげーぴったり。
男性陣はうーん、ちょっとねぇ。竹本、あんなに太くないし。真山、あんなキモヲタじゃないし。森田、髪型と服装が悪夢だし。花本先生、……合ってなくもないけど、もうちょい若い感じでも良かったのでは?
キャストが合っていないというより、服装や髪型で転んでしまっている感が強い。惜しい。
ストーリー。
いいんじゃない? つーか覚悟してたより全然おっけー。
ちょっと細かいところで「ハチクロらしさ」が出ていなかったりもするけど、大体は許容範囲内。リカさんの態度とかおかしーだろ! って感じだけど何とかギリギリ許せるレベル。
ちょっとラストが中途半端かな? でもまぁ、原作がまだ完結していないし、妥当なところで終わっていたと思う。
原作で最後まで行くことが無い(らしい)海へ旅行したのも、アナザーストーリーだからこそ出来る良さが出ていた。
そしてニャンざぶろう登場に吹いた(笑)。いやー、まさかアレが出てくるとは。登場と同時に映画館の各所でクスクス笑いが。
残念だったのが、竹本の自分探し消滅。残骸らしきものは微妙に残ってたけど、やっぱりあれは違う。あの自分探しが無くて何処がハチクロだ糞野郎と言いたくなるけど、まぁ尺の問題で仕方ないよね……。
まぁ総じてそこそこの出来。
音楽。
作中の曲はまったく印象に残らず。スタッフロールで流れるテーマ曲の内、スピッツの「魔法のコトバ」はすげーいいんだけど、スガシカオの曲が微妙。なんかスガシカオの曲らしくなくて、全然印象に残らない。スガシカオは「夏祭り」とか好きなんだけどなぁ。
結論。
キャストで失敗している感は否めないけど、まぁ漫画の映画化なら良い方では。最近観た映画化作品は「姑獲鳥の夏」(京極堂の最初の薀蓄が耐えられず速攻でさようなら。映像化する作品じゃねーよ)「疾走」(演技がギャグ)「最終兵器彼女」(阿呆くさくて最後まで観られませんでした)とか酷いものばかりだったので、久々にそこそこ観れるものに会った気がする(ちなみに今挙げた作品、原作は全て大好き)。
まぁ、原作ファンで、キャストを見ても「何とか耐えられそう」と思える人なら観ても損は無い。と思う。
ちょっと短いけど、この更新はリハビリのつもりなのでここでおしまい。また今度。
映画:『雲のむこう、約束の場所』感想
2006年7月1日 映画
DVD ビデオメーカー 2005/02/17 ¥4,935
――あの遠い日に
僕たちは、叶えられない約束をした――
ようやく、ようやく僕の近所のビデオ屋にこれが入った。
「雲の向こう、約束の場所」。「ほしのこえ」でその有り余る才能を見せ付けた新海誠監督の第2作目だ。
僕が「ほしのこえ」を観たのは3年ほど前なのだけど、もうね、あの映像美に痺れっぱなし。ラスト付近は鳥肌立てて震えていた。
だから、この「雲の向こう、約束の場所」も物凄く期待して観たのだけど、うん、荒削りというか、改善すべき点はまだまだあるけれど、やっぱり新海誠は本物だと思う。
「ほしのこえ」からの映像美は顕在。
どこまでも突きぬけていくような青空、白い雲。そこにそびえ立つ、高く、あまりに高い塔。朽ちたその姿を風に晒す廃駅。夕陽が差し込む放課後の教室。
……素晴らしい、としか言いようが無い。淡い色使いを鮮烈に魅せる光と影のコントラストは、まさにこの監督ならでは。背景でこれほど主張できる人ってのは、そう居ないんじゃないだろうか。
ただ、僕としては「ほしのこえ」ラスト付近、雪の降る街の風景にはちょっと劣るかな、と感じた。あれは正直、僕のツボに直撃してそのままぶち抜くような代物だったので。
ストーリーは「ほしのこえ」と同じく、「人と人の繋がり」を描いていて、まぁありがちと言えばありがちなもの。だけど、「ありきたり」ではなく、良質で「王道」な作品として仕上がっている。
ただ、これは「ほしのこえ」でも感じたことなのだけど、ちょっと中途半端なところがあるかな、と思う。
「ほしのこえ」では「自分の居場所の確立」ということもテーマに入っていて、ミカコが制服をずっと着用していたのも自己確立としての意味があったらしい(作中じゃ語られなかったけど。MF文庫Jのノベライズより)。その辺がどうも中途半端というか、消化不足な部分だった。
今回の作品では、平行世界などのSF要素がちょっと中途半端。セカイ系作品としていくのならあんな中途半端な説明はせず、もっと――そう、高橋しんの「最終兵器彼女」くらい説明を無くすべき。逆に、もっと一般の客層もとり込んでいくのなら、ちゃんとした説明をしていかなくちゃ。その辺がどうも消化不足と言うか、製作側のコンセプトが定まっていないように思う。
つーか、新海監督には一度、SF要素一切無しの直球ど真ん中の青春作品を作ってみて欲しい。いや、SF要素が叙情的な作品と絶対に合わない、というわけではない。新海監督のような、幻想的な雰囲気を持ち合わせたSFというのは海外では珍しくない(日本じゃ全然無いけど)。例えばレイ・ブラッドベリとかね。僕もブラッドベリは大好き、というか信者だし。
ただ、新海監督は多分SFが物凄く好きで、その思い入れが純粋な作品としての完成度を下げてしまっているんじゃないかな、と。
今作品の前半では、意図的に過剰なほど美化された青春の一コマが描かれている。その完成度を観ると、この人がただの何でも無い青春ものを作ったらどうなるんだろう、観てみたい、と思わせてくれるのだ。
いつかやってくれないかなぁ。
今回の作品では俳優を声優として起用していて、例えばかの「北の国から」で有名な吉岡秀隆が出演したりしている。のだけど、うん、いや確かに雰囲気はよく出てると思うんだけどね、ぶっちゃけ聞き取りにくい。下手、というか何というか。
スタジオジブリの宮崎監督といい、何故素直に声優を使ってくれないのか疑問に思う。
演出は中々に上手い。特に、音楽の使い方は「ほしのこえ」の時よりも確実に良くなっている。テーマ曲(?)のバイオリンの曲は雰囲気とも合っているし、物語上でも上手く使われているしで素晴らしいね。
ただ、ラストでボーカル曲が入るところは「ほしのこえ」と同じなのだけど、その部分の盛り上がりは微妙。そこは「ほしのこえ」の方が明らかに良かった。
ただまぁ、さっきの風景のところでも書いたけど、僕の中で「ほしのこえ」ラストシーンはあまりに鮮烈な印象を残しているので、その辺ちょっと主観が入り過ぎているかもしれない、というのは言っておく。
まぁ何にせよ、やはり素晴らしい作品。
セカイ系世界観だったり、ヒロインがフィクション的なキャラクター
だったりで、一般の人(ぶっちゃけると非オタク)にはちょっと受け入れがたいかもしれないけど、それでも是非一度は観て貰いたい。
それだけの価値はある。
今後どういう傾向の作品を新海誠が作っていくのか。それはまだ分からないけれど、取り敢えず楽しみにしていようと思う。
――あの遠い日に
僕たちは、叶えられない約束をした――
日本が南北に分断された、もうひとつの戦後の世界。米軍統治下の青森の少年・藤沢ヒロキと白川タクヤは、同級生の沢渡サユリに憧れていた。彼らの瞳が見つめる先は彼女と、津軽海峡を走る国境線の向こう側、ユニオン占領下の北海道に建設された謎の巨大な「塔」。いつか自分たちの力であの「塔」まで飛ぼうと、小型飛行機を組み立てる2人。ところが中学3年の夏、サユリは突然、東京に転校してしまう。うやむやのうちに飛行機作りも投げ出され、それぞれ別の道を歩き始めるのだが…。
2002年『ほしのこえ』で映像界に鮮烈なデビューを飾った新海誠監督の、初長編映像作品
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B000793FBK/ref=pd_bxgy_text_1/250-9574639-8933031
ようやく、ようやく僕の近所のビデオ屋にこれが入った。
「雲の向こう、約束の場所」。「ほしのこえ」でその有り余る才能を見せ付けた新海誠監督の第2作目だ。
僕が「ほしのこえ」を観たのは3年ほど前なのだけど、もうね、あの映像美に痺れっぱなし。ラスト付近は鳥肌立てて震えていた。
だから、この「雲の向こう、約束の場所」も物凄く期待して観たのだけど、うん、荒削りというか、改善すべき点はまだまだあるけれど、やっぱり新海誠は本物だと思う。
「ほしのこえ」からの映像美は顕在。
どこまでも突きぬけていくような青空、白い雲。そこにそびえ立つ、高く、あまりに高い塔。朽ちたその姿を風に晒す廃駅。夕陽が差し込む放課後の教室。
……素晴らしい、としか言いようが無い。淡い色使いを鮮烈に魅せる光と影のコントラストは、まさにこの監督ならでは。背景でこれほど主張できる人ってのは、そう居ないんじゃないだろうか。
ただ、僕としては「ほしのこえ」ラスト付近、雪の降る街の風景にはちょっと劣るかな、と感じた。あれは正直、僕のツボに直撃してそのままぶち抜くような代物だったので。
ストーリーは「ほしのこえ」と同じく、「人と人の繋がり」を描いていて、まぁありがちと言えばありがちなもの。だけど、「ありきたり」ではなく、良質で「王道」な作品として仕上がっている。
ただ、これは「ほしのこえ」でも感じたことなのだけど、ちょっと中途半端なところがあるかな、と思う。
「ほしのこえ」では「自分の居場所の確立」ということもテーマに入っていて、ミカコが制服をずっと着用していたのも自己確立としての意味があったらしい(作中じゃ語られなかったけど。MF文庫Jのノベライズより)。その辺がどうも中途半端というか、消化不足な部分だった。
今回の作品では、平行世界などのSF要素がちょっと中途半端。セカイ系作品としていくのならあんな中途半端な説明はせず、もっと――そう、高橋しんの「最終兵器彼女」くらい説明を無くすべき。逆に、もっと一般の客層もとり込んでいくのなら、ちゃんとした説明をしていかなくちゃ。その辺がどうも消化不足と言うか、製作側のコンセプトが定まっていないように思う。
つーか、新海監督には一度、SF要素一切無しの直球ど真ん中の青春作品を作ってみて欲しい。いや、SF要素が叙情的な作品と絶対に合わない、というわけではない。新海監督のような、幻想的な雰囲気を持ち合わせたSFというのは海外では珍しくない(日本じゃ全然無いけど)。例えばレイ・ブラッドベリとかね。僕もブラッドベリは大好き、というか信者だし。
ただ、新海監督は多分SFが物凄く好きで、その思い入れが純粋な作品としての完成度を下げてしまっているんじゃないかな、と。
今作品の前半では、意図的に過剰なほど美化された青春の一コマが描かれている。その完成度を観ると、この人がただの何でも無い青春ものを作ったらどうなるんだろう、観てみたい、と思わせてくれるのだ。
いつかやってくれないかなぁ。
今回の作品では俳優を声優として起用していて、例えばかの「北の国から」で有名な吉岡秀隆が出演したりしている。のだけど、うん、いや確かに雰囲気はよく出てると思うんだけどね、ぶっちゃけ聞き取りにくい。下手、というか何というか。
スタジオジブリの宮崎監督といい、何故素直に声優を使ってくれないのか疑問に思う。
演出は中々に上手い。特に、音楽の使い方は「ほしのこえ」の時よりも確実に良くなっている。テーマ曲(?)のバイオリンの曲は雰囲気とも合っているし、物語上でも上手く使われているしで素晴らしいね。
ただ、ラストでボーカル曲が入るところは「ほしのこえ」と同じなのだけど、その部分の盛り上がりは微妙。そこは「ほしのこえ」の方が明らかに良かった。
ただまぁ、さっきの風景のところでも書いたけど、僕の中で「ほしのこえ」ラストシーンはあまりに鮮烈な印象を残しているので、その辺ちょっと主観が入り過ぎているかもしれない、というのは言っておく。
まぁ何にせよ、やはり素晴らしい作品。
セカイ系世界観だったり、ヒロインがフィクション的なキャラクター
だったりで、一般の人(ぶっちゃけると非オタク)にはちょっと受け入れがたいかもしれないけど、それでも是非一度は観て貰いたい。
それだけの価値はある。
今後どういう傾向の作品を新海誠が作っていくのか。それはまだ分からないけれど、取り敢えず楽しみにしていようと思う。