CD-ROM KEY 2001/07/19 ¥9,240



――the 1000th Summer――

ついに「Air」終了。以下各シナリオの感想、及び総評。
ネタバレ注意。

・観鈴シナリオ

…………何これ?
としか言いようが無かった。終わった直後は。
まぁ、全部終わらせた今ならわかるけれど、これは「Air」のプロローグなのだ。
夢を終わらせ、夏が過ぎて、ついにそこに至る。
彼女が待つ、その大気の下に。

往人が「人を笑わせたい」という初心を思い出すシーンは良かった。
でも他は正直微妙。だっていきなり観鈴がぶっ倒れたりするのって、この時点じゃわけわかんねぇんだもん(笑)。
まぁ、このシナリオ単体を評価するのは無意味だよね。

・Summer編

凄く良かった。
うん、確かに驚いた! シナリオ始めると、いきなり「正歴5年」とか出るからね! これで驚かない奴はいねーから!
でもまぁ、裏葉と神奈と柳也、三人の掛け合いとかいいし。てゆーかね、神奈がもうね、可愛い過ぎ。
村娘の格好を柳也に見せたくないとか、骨張っているって言われたのを何気に気にし続けてるとかね。
最高。僕的に見事ツボった。

往人の持つ、「法術」とは何なのか。
佳乃が触れ、白穂の子供が触れた、「羽根」は。
往人の一族が探し続け、みちるが言っていた「女の子」。
そして。何故、観鈴があのようになってしまったのか。

Dream編で明かされなかったこれらのことが、このシナリオで全て明かされる。
そして、それだからこそ、これはとても悲しい物語だ。
道中ずっと練習していたお手玉を、最後(最期、かな?)まで母の前で成功させられなかった神奈。
夢とわかっていながら、家族のように暮らす未来を話し続ける三人。
自ら死地へと向かい、柳也と裏葉へ「達者で暮らせ」と言う神奈。
神奈に掛けられた、平穏を願う僧達の心の結晶でもある呪い。
救われるまで、永遠に柳也の死体に縋り付いて泣き続ける神奈。
自分達では救うことが出来ず、子供に願いを託すしか無かった柳也と裏葉。

そんな多くの悲しみがありながら、しかしこのシナリオは希望に満ちている。
まぁ旅の道中が明るい雰囲気だったからそう感じた、というのもあるかもしれないけれど、やっぱり「三人が『家族』だったから」というのが一番大きいように思う。
神奈を失った後も、柳也と裏葉は絶望しない。神奈を何とか救う方法は無いのかと模索し続ける。
そして、柳也を失ってしまった後の裏葉も精一杯前向きに生きていくのだろう。
大切な人を失って、何故希望を失わずに居られるのか。
それは、いつも傍に誰かが居てくれたからだ。神奈を失ってしまった柳也には裏葉が居て、柳也を失ってしまった裏葉には二人の子供が居た。
辛い時や悲しい時、いつも傍に居て支えてくれる誰か。
それって「家族」なんじゃねーの?

柳也の「まるで仲の良い家族のようだな」という台詞が物凄く印象に残った。
そう。Dream編の往人と美凪、みちる達のように。
彼らもまた、家族だったのだろう。

・Air編

そして――、1000度目の夏。
飛べない鴉は、1人の少女に出会う。

「Air」というゲームの本編とも呼べるシナリオ。
多分、「Air」で泣いた人は大半がこのシナリオで泣いたのだと思う。
けど、うん、ぶっちゃけ僕としてはSummer編の方が面白かったし、感動したかな。
まぁ、これに関しては完全に好みの問題でしょう。
ただ、音楽はもうこれまでにも増して凄い。「青空」とか反則だからアレ(笑)。

Dream編での往人が「そら」という名の鴉になり(転生?)、観鈴を見守っているのだけど、まぁ正直Air編の主人公は晴子さん。
誕生日や温泉旅行云々など、晴子さんの本音が明かされていく。
そして橘家から帰ってきた晴子さんが「母」として――というのがAir編のキモなのだけど、さっきも書いた通り、僕はその部分にあまり思い入れが無い。ので、サックリ飛ばすことにする。

往人は人形に願う。もう1度、観鈴と一緒にやり直したい。
それは叶えられたけれど、記憶も失われかけた1羽の鴉としてだった。
出来たのは、観鈴が1人きりの時に傍に居ることだけ。一度抱き締めてやることだけだ。
法術(方術)使いの家系が1000年かけて翼人の女の子に出来たことは、それだけだった。
だけど、たったそれだけ。それだけのことが、あの奇跡を引き起こした。
さっきのSummer編のところでも書いたけれど、「傍に居てくれる人=家族の大切さ」というのが、「Air」のテーマの一つなのだと思う。

観鈴がゴールに辿り着いた後。
そら(=往人=柳也の生まれ変わり?)は初めて空を舞い、探し続けていた「空にいる少女(=神奈)」へ会いに行く。
「この星の最初の記憶」(=観鈴が見た、恐竜と一緒に飛ぶ夢)と「幸せな日々の記憶」を持って。
そして。
最後の翼人は、ついに悪夢から開放されるのだ。

最後の二人については、「少年=往人の生まれ変わり=柳也の生まれ変わり」で「少女=観鈴の生まれ変わり=神奈の生まれ変わり」なのかなぁ、とも思うけれど。
でもこの二人ってのは、なんつーか、そういう細かい設定の整合性とか関係無くて、「Air」という物語そのものの象徴なんじゃないか、という気もする。

・総評

音楽がとにかく素晴らしかった。それで全て許せるくらい。
「鳥の詩」「青空」「夏影」が特にお気に入り。
あと、「縁」のサブタイトルがたまらない。だって「the way so far」ですよ? 「その道は、あまりに遠く」。「縁」でそのサブタイトルってのが、なんかこう、最高。
プレイして良かった。全体を通じて、そう思える作品だったと思う。
「Air」。名作、と言っても良い出来。

最後に。
全体のテーマとして「家族」というのがあると思うのだけど、それと共に「受け継がれるもの」というテーマもあるんじゃないかと思う。
人間1人の人生なんて、ちっぽけなもんだ。僕が明日殺されたとしても、世界は何も変わらない。
だけど、そういう1人1人の人生が束ねられて、流れが出来る。その内の幾つかは人々に記憶され、受け継がれていく。
そうして僕達が必死こいて足掻きながら生きていく限り、流れが止まることは無い。
世界はまわる。
君をのせて。
僕をのせて。

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