読書:米澤穂信『ボトルネック』感想
2006年9月20日 読書
ISBN:4103014717 単行本 米澤 穂信 新潮社 2006/08/30 ¥1,470
――いまさら、いまさら取り返しなどつくものか!
「氷菓」「愚者のエンドロール」などの古典部シリーズで角川スニーカー文庫からデビュー、最近は一般文芸の仕事も引き受けているミステリ作家。米澤穂信(氏の公式サイトはこちら。『汎夢殿』http://www.pandreamium.net/index.html)。
この「ボトルネック」は最新刊なのだけど、ミステリじゃない作品ははじめてなのかな?
恋人の弔い中に兄の死を告げられ、もう帰ろうと崖から花を投げ込むと自身が転落。
気がつくと、そこは「自分が生まれなかった世界」であり、「生まれなかった姉が生まれた世界」だった。
小市民シリーズではかなりダークな青春を描いている米澤穂信だけど、今回はそれを上回る暗さだ。暗黒青春ぶっちぎり。
いつものことながら、今回も厭世的な高校生が主人公。それも「さよなら妖精」や小市民と比べて、かなりひどい。
懐かしくなんかない。爽やかでもない。
若さとは、かくも冷徹に痛ましい。
ただ美しく清々しい青春など、どこにもありはしない――。
というのが帯のキャッチだけど、すげー上手く内容を表していると思う。
タイトルの「ボトルネック」ってのは、そのまんま「瓶の首」で、つまり「道が狭くなり、流れが滞ってしまう場所」。
経済や情報技術分野では、全体の効率を低下させているごく一部分の事を指す。どんなに他の部分を改善しても、ボトルネックを発見し、除去しない限り効率は絶対に向上しない。
ボトルネックは排除しなければならない。
んー、どうも上手く書けないな。長い間レビューは書かずにいたせいか。つーかやっぱりネタバレ無しに書くには難しい。
まぁ、いつもと違ってミステリでもないし、爽快感を感じられるような小説でもないけど、質の高いものであることは確か。
「さよなら妖精」の暗めな米澤穂信が好きなら、買っても損は無いと思う。
以下はネタバレ感想。
信じていたただひとつの恋人との繋がりすら失ってしまい、自身がボトルネックであることを自覚してしまった主人公。
読んでいて、やっぱり「違う可能性」というものは見ちゃいけないものなんだな、と思う。
人生ってやつはまぁ、選択に次ぐ選択、ひたすら選択の連続で成り立っているわけで。僕たちは常に何かを選び、何かを切り捨てながら生きているわけだ。やっぱりああすりゃよかったー、とか頭抱えたりするけど、それでもそれが最善だった、と信じるしかない。そんなことでいちいち悩んでいたら、何も選べなくなってしまうからね。
でも、もし仮に「自分の代わりに誰かがいる世界」を体験してしまって、それが自分が居た世界よりも良いものだったとしたら、自身がボトルネックなのだと知ってしまったら、もう何も出来なくなる。レーゾンデートルを喪失してしまう。自分自身がまったく信じられなくなってしまう。
物語の最後、どちらの道を行くべきか決められない主人公は、つまりそういうことだったんじゃないかな、と。
僕自身も自分に自信が無くて、自分がボトルネックじゃないかとビクビクしている人種だ。だからこの話は、何というか、凄く痛かった。
――いまさら、いまさら取り返しなどつくものか!
恋人を弔うため東尋坊に来ていた僕は、強い眩暈に襲われ、そのまま崖下へ落ちてしまった。
――はずだった。
ところが、気づけば見慣れた金沢の街中にいる。不可解な想いを胸に自宅へ戻ると、存在しないはずの「姉」に出迎えられた。
どうやらここは、「僕の産まれなかった世界」らしい。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4103014717/sr=1-1/qid=1158676789/ref=sr_1_1/250-7890379-3404269?ie=UTF8&;
「氷菓」「愚者のエンドロール」などの古典部シリーズで角川スニーカー文庫からデビュー、最近は一般文芸の仕事も引き受けているミステリ作家。米澤穂信(氏の公式サイトはこちら。『汎夢殿』http://www.pandreamium.net/index.html)。
この「ボトルネック」は最新刊なのだけど、ミステリじゃない作品ははじめてなのかな?
恋人の弔い中に兄の死を告げられ、もう帰ろうと崖から花を投げ込むと自身が転落。
気がつくと、そこは「自分が生まれなかった世界」であり、「生まれなかった姉が生まれた世界」だった。
小市民シリーズではかなりダークな青春を描いている米澤穂信だけど、今回はそれを上回る暗さだ。暗黒青春ぶっちぎり。
いつものことながら、今回も厭世的な高校生が主人公。それも「さよなら妖精」や小市民と比べて、かなりひどい。
懐かしくなんかない。爽やかでもない。
若さとは、かくも冷徹に痛ましい。
ただ美しく清々しい青春など、どこにもありはしない――。
というのが帯のキャッチだけど、すげー上手く内容を表していると思う。
タイトルの「ボトルネック」ってのは、そのまんま「瓶の首」で、つまり「道が狭くなり、流れが滞ってしまう場所」。
経済や情報技術分野では、全体の効率を低下させているごく一部分の事を指す。どんなに他の部分を改善しても、ボトルネックを発見し、除去しない限り効率は絶対に向上しない。
ボトルネックは排除しなければならない。
んー、どうも上手く書けないな。長い間レビューは書かずにいたせいか。つーかやっぱりネタバレ無しに書くには難しい。
まぁ、いつもと違ってミステリでもないし、爽快感を感じられるような小説でもないけど、質の高いものであることは確か。
「さよなら妖精」の暗めな米澤穂信が好きなら、買っても損は無いと思う。
以下はネタバレ感想。
信じていたただひとつの恋人との繋がりすら失ってしまい、自身がボトルネックであることを自覚してしまった主人公。
読んでいて、やっぱり「違う可能性」というものは見ちゃいけないものなんだな、と思う。
人生ってやつはまぁ、選択に次ぐ選択、ひたすら選択の連続で成り立っているわけで。僕たちは常に何かを選び、何かを切り捨てながら生きているわけだ。やっぱりああすりゃよかったー、とか頭抱えたりするけど、それでもそれが最善だった、と信じるしかない。そんなことでいちいち悩んでいたら、何も選べなくなってしまうからね。
でも、もし仮に「自分の代わりに誰かがいる世界」を体験してしまって、それが自分が居た世界よりも良いものだったとしたら、自身がボトルネックなのだと知ってしまったら、もう何も出来なくなる。レーゾンデートルを喪失してしまう。自分自身がまったく信じられなくなってしまう。
物語の最後、どちらの道を行くべきか決められない主人公は、つまりそういうことだったんじゃないかな、と。
僕自身も自分に自信が無くて、自分がボトルネックじゃないかとビクビクしている人種だ。だからこの話は、何というか、凄く痛かった。
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